外注時の契約形態に関して不明点などあるかと思いますので、基本的な部分をまとめました。
1.│請負契約
「請負契約」とは、「受託者が、委託された業務を完成させることを約束し、完成した成果に対して発注者が報酬を支払う契約」のことです(民法第632条)。
2.│準委任契約
「準委任契約」とは、「特定の業務の遂行を目的とした契約であり、仕事の結果や成果物に対して完成の義務を負わない」契約のことです。
そのため業務の結果に対して不備があったとしても、委託者は受託者に対して修正や保証を求めることができません(民法第656条)。
2020年に改正された民法で2種類の形態が定義されています。
2-1.┃履行割合型
「履行割合型」とは、「受託業務の「労務」に対して報酬を支払う形式であり、業務時間や工数などの業務量に応じて報酬が支払われる」契約のことです(民法第648条第3項)。
たとえ委託業務が途中で終了した場合も、委託業務の進捗割合に応じた報酬を支払う必要があります。
2-2.┃成果完成型
「成果完成型」とは、「受託業務の「成果」に対して報酬を支払う形式の」契約のことです(648条の2第2項、第634条)。
たとえ完成不可能となった場合や契約解除となった場合も、委託者の利益の割合に応じた報酬を支払う必要があります。
3.┃請負契約と準委任契約の違い
請負契約と準委任契約の義務や責任範囲には、次のような違いがあります。
・仕事の完成義務
・契約不適合責任(瑕疵担保責任)
・善管注意義務
・中途解約
・再委託
3-1.┃仕事の完成義務
請負契約と準委任契約の最も大きな違いが「仕事の完成義務」の有無です。
請負契約では受託者は業務を完了させ、成果を納品する義務があります。
一方で準委任契約では、受託者は業務の遂行が目的のため業務を完了させる義務が生じません。
3-2.┃契約不適合責任(瑕疵担保責任)
契約不適合責任とは、契約において納品物に欠陥(品質不良や数量不足など)の不備があった場合に受託者が負う責任のことをいいます。
従来の民法では「瑕疵担保責任」と呼ばれていたもので、2022年の民法改正で「契約不適合責任」の呼称に変わりました。
請負契約では契約不適合者の責任が発生しますが、準委任契約には発生しません。
3-3.┃善管注意義務
善管注意義務とは、「善良なる管理者の注意義務」の略称です。
契約において一般的に要求される注意の程度について明文化したものであり、民法第644条では次のように定められています。
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
民法第644条
3-4.┃中途解約
請負契約と準委任契約では中途解約できるタイミングが異なります。
請負契約では成果物が完成する前であれば、委託者側が中途解約することができます。
ただし、委託者が中途解約する場合は受託者に対する損害を賠償する義務を負うこととなります。
一方で準委任契約では委託者、受託者のそれぞれがいつでも契約を解除することができます。準委任契約では業務の遂行を目的とするため、業務が不要となった時点で解約が可能となります。
3-5.┃再委託
再委託とは、受託者が下請けなどの第三者に改めて業務を委託することです。
請負契約では再委託が可能ですが、準委任契約では原則として再委託が不可能となります。
ただし、準委任契約の場合も委託者の承諾がある場合は再委託可能となります。
4.┃派遣と準委任契約の違い
準委任契約と同じように工数をベースとして費用を支払う契約形態として「派遣」があります。派遣と準委任契約の違いも記載しておきます。
準委任契約では 「業務の提供」であるのに対して、派遣は「人材の提供」といった点で異なります。
派遣では派遣先の会社が、派遣元の会社と「労働者派遣契約」を結び、派遣社員を受け入れて派遣先の管理下で業務を行います。派遣契約では、派遣先企業に指揮命令権があり、派遣社員に対して細かな業務指示を行うことができます。
一方で、準委任契約(請負契約含む)では委託者に指揮命令権がありません。そのため、委託契約(請負契約や準委任契約)であるにも関わらず委託側が細かな業務指示を行う場合は偽装請負(契約形態が委託契約、実態が派遣業務)という違法な状態になるので注意が必要です。